ハープは何調にチューニングするんですか?

基本的なことがら:赤い弦はド、青い弦はファとなります。
グランドハープの場合:解放弦(ペダルが全部上にある状態)で変ハ長調にチューニングします。変ハ長調とは♭が7つ(つまり全部)の調で、ドの♭から長音階となります。これによってペダルを一段踏んだ状態でナチュラルに、一番下まで踏んだ状態で♯となります。
アイリッシュハープの場合:解放弦(フックが全部下りている状態)で変ホ長調にチューニングします。変ホ長調とは♭が三つついた調で、ミとラとシが♭に、他の音はナチュラルになります。そしてミの♭から長音階になります。これによってこの楽器では♭が3つまで、♯が4つまでの調が演奏できます。例えばハ長調ならミとラとシのフックを上にあげると全部ナチュラルの音となります。


ハープの保管方法で注意することは?

部屋にハープがあるということは赤ちゃんが一人増えたのと同じです。部屋が寒ければ暖ため、暑ければ冷やしてください。人間に快適な環境は楽器にも快適です。ハープも風邪をひきますし、怪我もします。精神病にだってかかります。湿度は45%から75%の間に保ってください。また直射日光は避けてください。木や塗装の収縮で楽器を傷めます。同じ理由で冷暖房機の風が直接当たるのも避けてください。楽器も汗をかきますが、それ自身に体温がないので人間よりずっと影響を受けます。
汗をかいたりほこりが付いたら柔らかい布で拭いてください。ピアノ用のシリコン剤は使えますが、家具用のワックスはかえってほこりをつけ、またオイルが塗装を傷めてしまうものもありますので、使わない方が賢明です。
カバーは楽器を使わないときは常にかけていればいい訳でもありません。かえって湿気を閉じ込めてしまう場合もありますので、注意してください。


ガット弦とナイロン弦、どちらを張るべきですか?

グランドハープの場合、同じ場所に張る弦でもナイロン弦とガット弦の2種類が販売されています。本来ハープはガット弦でした。ガットとは羊の腸から作られています。ナイロン弦は第2次世界大戦後にできた素材で、もともとハープの音色はガット弦のものでした。しかしガット弦は湿気に弱くて切れやすいのと値段が高いので、特に切れやすい高音部だけにナイロン弦を張るのが一般的です。質量の違いでガット弦の方が柔らかくてしかも重い音がでます。最終的には好みでどちらを張っても構いませんが、一般的には上から1オクターブFまでか、2オクターブCくらいまでナイロン弦を張ります。しかし海風が当たるような場所ですとガットはすぐに傷みますので、経済性と張り替える手間の関係でナイロン弦が多くても仕方ないでしょう。なにしろ値段が三分の一で、切れにくさは三倍ですから。
アイリッシュハープでナイロン弦用の楽器とガット弦用の楽器がありますが、この場合は指定された弦を張ってください。ナイロン弦用のハープにガット弦を張ると楽器が壊れる場合もあり、メーカーの保証範囲外です。


弦のつけ方はどうやればいい?

調弦と弦の張り替えは演奏者の仕事です。弦の張り替えにはまず新しい弦に緒止めを作ります。これはほどけなければどう結んでも良いのですが、下図のようにすると確実でスマートに結べます。注意することは余ったしっぽの部分が長いと楽器に触れて雑音となる場合がありますので、もししっぽが長ければ切ってください。これを響板の裏から通します。最初に弦を上から響板に通してから緒止めを作ればもっと簡単です。またワイヤー弦は最初から緒止めが出来ていますので何も準備することはありません。
弦の緒止めができたらチューニングピンの穴に通し、ナイロン弦とガット弦の場合はぴんと張った状態でチューニングピンを時計廻りに順に巻いていきます。これでチューニングピンに3周前後回った状態でちょうど音が合うはずです。もし弦が伸びてぐるぐる巻の状態になったら、一度緩めてからもう一度やり直してください。チューニングピンの部分では外から内に向かって順序よく巻き付けるようにします。中音から上の細い弦では下右図のようにするとすべって緩んだり、切れやすくなることはありません。
ワイヤー弦の場合はそれほど弦が伸びることはありませんので、チューニングピンの穴に通してぴんと張ってからからそのまま巻きますとチューニングピンに1周巻きつかないうちに音が合ってしまいます。これでは弦が切れやすいのでチューニングピンの穴に通してピンと張ってから3~4cmくらい戻してから巻き始めると2周前後で音が合い、理想的になります。安全のためチューニングピンで余った弦はペンチで切っておきます。
注意すること:弦はねじれた状態で張ってしまいますと音程が定まらず、ひどい時は1本の弦から音が二つ聞こえたりします。チューニングピンに通す時には弦がねじれないように素直に張りましょう。

緒止めをつける弦

緒止めをつけない弦

チューニングピンでのとめ方


調弦が上手にできないんだけど

ほとんどの方がチューナーを使って調弦するでしょうが、チューナーで合っているからといって耳に心地よく聞こえるとは限りません。もしチューナーで合っているのに音程が変だと思うなら、それはチューナーよりあなたの耳の方が確かです。チューニングはとても奥の深い問題で、機械的、数学的に音程を割り振ってもそのまま音楽的とはなりません。調弦がしっくりしない、納得できないと感じたら一度次の方法を試してみてください。ハープの場合、平均率で合わすしかありませんので、まず中央の2オクターブはチューナーで合わせます。そしてオクターブとスケールを弾いてみてしっくりしているか確かめます。2オクターブだけ合ったらチューナーを止めてしまいましょう。もしその音程も気に入らないのでしたら、オクターブ、5度、4度、長3度もご自分の耳でやってみてください。調弦がじょうずなことはあなたの財産となります。調弦が合っていないように感じる大きな原因はオクターブの正確さです。オクターブの間隔は難しく、分かりずらいものです。しかし2オクターブの間隔は微妙な狂いもかなり分かりやすいのです。ですから最初に合わせた音から、2オクターブ違いの同じ音を両手で同時に弾いて合わせてみましょう。音量は小さくて結構です。1音づつこの方法ですべての弦を調弦するだけで、今までの調弦とはかなり違ったものになるでしょう。
調弦の順序は中央から順に下に下りていき、最低音まで合ったら今度は中央から順に上に上がっていきます。この理由は低音ほど張力が強いので楽器に及ぼす影響が強いからです。ですから低音が大きく狂っていたら、最初に合わせた中央部をもう一度チューナーで確かめてください。
チューナーのない方はピアノやハーモニカなど音の固定した楽器で音を取ってください。


弦の音程がすぐに狂ってしまうのですが
張り替えたばかりの弦は伸びてすぐに狂ってきます。しかし調弦する時、音程が低くなるだけでなく、高くなっていることを経験したこともあるでしょう。弦はいつも気温と湿度によって変化しています。演奏会の途中で何度も時間をかけてチューニングするのは、聞いている人にとっても決して心地よいものではありません。演奏者だけでなく聞く人も音楽に没頭できなくなってしまいます。ハープ弦の音程を安定させるには常に引っ張ることです。ふだんチューニングする時、弦の中央部を手でつかんで引っ張ります。もし音程が下がっていたらまず引っ張ってもっと下げてから調弦してください。もし音程が高くなっていたら、チューニングキーで下げる前に弦を引っ張って下げてください。もし音程が合っていても、そのままにしないで引っ張ってから、また合わせてください。いつもこれをくり返すことで音程は安定し、少々の気温、湿度の変化でも狂いにくくなります。
私の大好きなあるハーピストは開場前に調弦した楽器を開演までの30分間舞台に楽器をおいたままにし、開演でステージに出て椅子に座るや、全く音を確かめずにすぐに演奏を始めます。これで聴衆もあっと言う間に音楽に引き込まれてしまいます。もちろん音は狂っていません。いつも弦の手入れをしていれば多少環境が変わっても音程は安定します。


ペダルロッドやスプリングが折れた時、対処法はありますか?

ペダルロッドとはグランドハープのペダルとアクションを結んでいる、柱の中を通っているハガネのロッドです。これが折れるとペダルを踏んでもアクションが動かず音が変わりません。普通の場合ディスクが途中でとまったままで、その音はひどい雑音を発するでしょう。部品と特殊な道具が必要ですので修理を依頼するしかありません。しかし演奏会直前や演奏中に折れてしまったらその暇はありません。たぶんパニックに襲われるでしょう。演奏を放棄しますか? 冷静になってください。その音の最低音のディスクを手で廻して開けば解放弦にできます。この時だけはディスクは手で動くはずですし、その音列のすべてのディスクは同時に動くでしょう。そうしてからその音をすべてナチュラルに調弦します。これでどうペダルを踏んでも音はナチュラルのままですし、ナチュラルだけ確保できます。♭があるときは1本下の弦で、♯は1本上の弦で作ることができます。あなたのセンスが問われるときです。かなりの制約はありますが、それでも演奏の穴をあけずに何とか続けられるかも知れません。
ペダルスプリングが折れた時は、今度はペダルが下に行ったきり上がってきません。しかし手でペダルを上げれば動きますし、音も変わります。この時もペダルはナチュラルに固定したまま、同じように異名同音を使ってしのげます。
どちらの場合も再びパニックを起こさないために、そのペダルは折り畳んでおいたほうがいいでしょう。


弦が切れたのにスペアがない時、なんとかする方法はありますか?

本番直前にスペア弦を用意していないということはまずないでしょうが、何が起こるかわかりません。ガット弦なら結んで使う方法があります。弦の中央で切れた場合は不可能ですが、響板かチューニングピンのあたりで切れた時は右図のように結び、ライターの火で先を燃やしますと動物性繊維ですから縮れて太くなり、ほどけなくなります。注意することは、音が合った時に結びめがチューニングピンとその下のナットの間に来るように長さを調節することです。結び目がチューニングピンに巻かれますとすぐに切れてしまいます。またナットの下に来ると変な音しか出ませんので、ちょうどナットのあたりで結べば大丈夫です。音のでる部分は本来の弦で、上の繋ぐ弦は多少太い弦がいいでしょう。これは音色も変わらず、言わなければ人には気付かれません。この方法はナイロン弦やワイヤー弦には使えません。ガット弦だけです。それもできない時は、その音より細い弦を張れば、音は変ですがとにかく音は出せます。その音より太い弦を使ってもその音程に上げるまでに切れてしまう危険がありますので避けましょう。とにかくスペア弦のチェックは忘れずに。

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